自己肯定感が低い人の特徴7つと、その原因|「長所を探す」が効かない理由

氣分を上げる

ほめられて、とっさに「いえ、そんなことないです」と返す。あとで思い返して、なぜ素直に受け取れないんだろうと考える。そういう夜があります。

「自己肯定感が低い人の特徴」で検索する人の多くは、自分が当てはまるかどうかを確かめにきます。ところが、あてはまる数を数えても気分は変わりません。数えたあとに何をするかが決まっていないからです。

この記事は、特徴を並べて終わりにしません。日本のこども・若者1,089人に聞いた国の調査には、「自分には長所がある」と答えた人のほうが、「自分に満足している」と答えた人より8.2ポイント多いという数字があります※1。長所は自覚しているのに、満足はしていない。ここに、よくある勘違いがまるごと写っています。

自己肯定感が低い人の特徴7つ|数えるより「矢印の向き」を見る

自己肯定感が低い人の特徴は、次の7つに整理できます。ただし、あてはまる数は問題ではありません。見るのはその行動の矢印が「相手」に向いているか、「自分の値打ち」に向いているかだけ。同じ「断れない」でも、相手を思って断らないのと、嫌われる自分が怖くて断れないのは別物です。

  1. 断るのが苦手で、予定を引き受けすぎる
  2. 必要のない場面まで謝ってしまう
  3. ほめられると反射的に打ち消す
  4. 人の機嫌の変化に、自分でも驚くほど早く気づく
  5. 選ぶのに時間がかかり、あとから決め直したくなる
  6. 100点でなければ0点と感じ、途中でやめてしまう
  7. 結果が出た月だけ、自分を合格にする

1〜4は人に向かうとき、5〜7は自分に向かうときに出るサインです。順番に見ていきます。

自己肯定感が低い人の特徴を「人に向かう4つ」と「自分に向かう3つ」に分ける

人に向かう4つには、共通の下地があります。相手の反応を、自分の値打ちの点数表として読んでしまうこと。だから断れないし、謝りすぎるし、ほめ言葉も点数の前払いに見えて落ち着かない。4つ目の「機嫌の変化に気づく」に至っては、能力そのものです。点数表を読み続けてきた人だけが持つ精度の高さ。

4つ目は、もう少し具体的に書いておきます。会議で相手の返事が半拍遅れた、既読がついてから返信までが昨日より長い、挨拶の声の高さがいつもと違う。こうした変化に気づくこと自体は、営業でも接客でも介護でも、そのまま仕事の腕前になる力です。問題は、気づいたあとに「自分が何かしたのかもしれない」と続けてしまうところ。

ここを誤解したまま「気にしすぎ」で片づけると、せっかくの感度まで一緒に捨てることになります。捨てるのは感度ではなく、読み取ったものを自分の値打ちに変換する一手だけ。

自分に向かう3つは、判定の基準が外にあるときに出ます。5の「決められない」は選択肢の多さではなく、外した自分を見たくない気持ちから来る足踏み。6の「100点か0点か」は、完璧主義として語られることが多い形です(基準の下げ方ではなく終わりの決め方については完璧主義の治し方|基準を下げるより「終わりを先に決める」5つの手順で扱いました)。

そして7つ目の「結果が出た月だけ、自分を合格にする」。これは私自身が長くやっていました。

会社員をやめてフルコミッション(売れた分だけ収入になる形)で働きはじめたころ、月の売上がそのまま自分の点数に見えていました。売れた月は自分が優秀で、売れない月は自分に価値がない。実際には、季節も担当地域も景気も動いているのに、動いているのは自分の値打ちだけだと思い込んでいたわけです。固定給のありがたさを痛感したのはこのときで、会社が毎月同じ額を払えるのは、売上の上下を吸収する仕組みが会社の側にあるからでした。

数字が上下したのであって、自分が上下したのではない。これに気づくのに、私は何年もかかりました。

自己肯定感が低い原因は性格ではない|外側にある3つの条件

原因を性格に置くと、そこから先に打つ手がありません。実際には、育った家庭の受け止め方・いま比べている相手・年代という、自分の外側にある3つが効いています。性格の話ではなく、置かれている場所の話。

家庭については、国の調査が手がかりです。こども家庭庁が令和5年11〜12月に日本・アメリカ・ドイツ・フランス・スウェーデンの13〜29歳へ行った調査で、日本の回答者1,089人のうち「自分の親(保護者)から愛されている(大切にされている)と思う」は80.8%※1。いっぽうで「自分自身に満足している」は57.4%にとどまります。愛されている実感は8割あるのに、自分への満足は6割に届かない。 家庭で否定された記憶がなくても、自己肯定感は下がりうるということ。

比べる相手の影響は、比べてしまうのはなぜ?人と比べる自分を責めなくていい理由と対処法に書いたとおりです。ひとつだけ足しておくと、比べる相手は自分で選んだ相手ではありません。画面をひらいた順に流れてきた相手です。同じ職場の同期10人と比べていた時代と、うまくいっている人だけが流れてくる時代では、同じ自分でも点数が変わる。

ここでは3つ目の年代を見ます。同じ調査で「自分自身に満足している」(そう思う+どちらかといえばそう思う)を年代別に足すと、13〜14歳73.5%、15〜19歳59.8%、20〜24歳57.0%、25〜29歳51.2%※1。13〜14歳と25〜29歳で22.3ポイントの開きがあります。

学年が上がり、仕事が始まり、比べる相手が増えるほど下がっていく形。自分の性格が10年で悪くなったわけではありません。

自己肯定感を上げようと「長所」を探しても効かない|1,085人のデータが示したこと

ここがこの記事の中心です。長所を書き出すワークをまじめにやってみて、それでも何も変わらなかった——そう感じたことのある人は多いはずです。「長所を書き出す」は、自己肯定感を上げる手順としてよく勧められます。ところが同じ調査の分析では、長所の自覚は生活の満足度をほとんど説明していませんでした。

こども家庭庁は、自己認識の8項目を説明変数、生活満足度・幸福感・人生の意義を目的変数にした重回帰分析(複数の要因が結果にどう効くかを同時に見る統計の方法)を行っています。日本の1,085人ぶんの結果は、次のとおり※1。

自己認識の項目 生活満足度への係数 幸福感への係数
私は、自分自身に満足している 0.31(有意) 0.31(有意)
自分には長所があると感じている 0.06(有意差なし) 0.08(有意)
今の自分が好きだ 0.15(有意) 0.07(有意差なし)
自分には友人が十分いる 0.10(有意) 0.09(有意)

係数は−1〜1の値をとり、数字が大きいほど効き方が強いという読み方をします。長所の自覚は0.06。誤差と区別がつかない水準でした。いっぽう「自分自身に満足している」は0.31で、8項目のうち最も大きい。報告書も、生活満足度と幸福感では自分への満足度の係数が最も大きかったと書いています。

冒頭の数字がここにつながります。日本の若者は「自分には長所がある」に65.6%が、「自分自身に満足している」に57.4%が、「今の自分が好きだ」に53.4%が、そう答えました※1。長所の自覚だけが、ひとつ抜けて高い。 つまり多くの人は、長所を見つけられずに困っているのではありません。見つけたうえで、それでも自分を合格にしていない。

だから、長所リストを1枚増やしても効きません。増やすべきは「できていなくても、自分でいていい」と言う側です。上げ方そのものの手順は自己肯定感を上げる方法|「自分をほめる」が効かない人へ、研究が示す3つの順番にまとめました。

自己肯定感と自尊心・自信・自己効力感・自己受容は何が違うのか

自己肯定感のまわりには、よく似た言葉が4つあります。混ざったままでは、手当ての選び方がずれたままです。見ている対象がそれぞれ違うと考えると、きれいに分かれます。

言葉 見ている対象 頭に浮かぶ言葉
自己肯定感 条件をつけない自分の存在 「うまくいかなくても、いていい」
自尊心 他人と比べたときの自分の位置 「あの人より下に見られたくない」
自信 特定の場面での見通し 「この作業なら任せてほしい」
自己効力感 やればできるという手応え 「練習すれば届く」
自己受容 長所も短所も含めた事実 「こういう自分だ、と分かっている」

自信と自己効力感は、練習すれば積み上がるものです。 資格を取る、場数を踏む、やり方を覚える。いっぽう自己肯定感は、積み上げでは届きません。積み上げた量で決まるなら、実績の多い人ほど高くなるはずですが、実際にはそうなっていない。承認をどれだけ集めても満たされない仕組みは、承認欲求が強い人の特徴7つ|自己顕示欲との違いと、なくす前にやることに書きました。

自己肯定感は年齢とともに上がる|4歳から94歳までを追った研究の形

「もう手遅れだ」と感じている人に、ひとつ数字を渡します。自己肯定感は、年をとるほど上がっていきます。

スイスのベルン大学の研究チームが、4歳から94歳までの16万人以上を追った331の縦断研究(同じ人を時間をおいて繰り返し測る調査)をまとめました※2。結果は、子どものころから上がりはじめ、11〜15歳は横ばい、そこから30歳ごろまで強く上がり、60歳前後で人生の最高値に届くという形。思春期に落ちるという通説は、データでは支持されませんでした。

いま20代で51.2%という日本の数字を、この形と重ねると見え方が変わります。低い時期を歩いているだけで、下り坂を歩いているわけではない。いちばん高くなるのは、まだ30年以上先です。

自己肯定感が低い人がまず変えるのは、自分ではなく「置き場所」

特徴を直そうとすると、人に向かう4つは感度ごと削ることになります。直すのは自分ではなく、自分を判定している場所のほう。 今日からできる形は、次の3つです。

1つ目。責めている一文の主語を、「私」から「その行動」に書き換える。 「自分はだらしない」を「提出を3日遅らせた」に直すだけ。主語が行動になると、直せる場所が1つ見つかります。直せる場所がある文は、自己嫌悪ではなく反省です(その違いは自己嫌悪とは?反省との違いと、535人の調査でわかった陥りやすい人の共通点で扱いました)。

2つ目。「何もせずのんびりできて、ありのままでいられる場所」を数える。 同じ調査で、日本の若者がその場所として挙げたのは自分の部屋67.0%、家庭57.1%※1。ゼロなら、まず1つ作る。役割を求められない場所が1つあるだけで、判定の場所は1か所に集まりません。

3つ目。調子が落ちたときの相談先を、落ちる前に決めておく。 決めておかないと、落ちてから探すことになります。働く人向けの電話・SNS・メールの相談窓口は、厚生労働省の「こころの耳」に一覧があります※3。

この記事で扱った「自己肯定感」という言葉そのものを、一冊まるごと扱っているのが自己肯定感の教科書(中島輝/SBクリエイティブ・2019年)です。

なお、ここで紹介した調査はいずれも一般のこども・若者を対象にしたもので、治療の代わりになるものではありません。つらさが強いときは、自分で判断せずに医療機関や公的な窓口を頼ってください。

まとめ|自己肯定感が低い人の特徴は、裏返せば「気づける人」の特徴

  • 特徴は7つ。ただし数えるのではなく、矢印が相手に向いているか自分の値打ちに向いているかを見る
  • 人に向かう4つの下地は、相手の反応を自分の点数表として読む癖。 感度そのものは能力
  • 原因は性格ではなく、家庭・比べる相手・年代の3つ。 13〜14歳73.5%が25〜29歳では51.2%まで下がる※1
  • 長所を書き出しても届かない。 生活満足度への係数は0.06で、自分への満足の0.31に遠く及ばない※1
  • 日本の若者は長所を65.6%が自覚し、満足は57.4%。 見つけていないのではなく、合格にしていない
  • 自己肯定感は60歳前後が最高値。 16万人超を追った331の研究が示した形※2
  • 私は、売れた月だけ自分を合格にしていた。 動いていたのは数字であって、自分の値打ちではなかった

自己肯定感が低い人は、鈍い人ではありません。人の機嫌にも、自分の穴にも、よく気づける人です。気づく力はそのまま置いておいて、気づいたものを自分の値打ちに換算する一手だけをやめる。

今日のいちばん小さな一手は、いま自分を責めている一文の主語を、「私」から「その行動」に書き換えること。それだけで、直せる場所が1つ見つかります。

出典

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