半導体の種類と製造工程を勉強してきましたが、今回はいよいよ「現状の課題」です。
より高性能なAIチップを作るための壁と、それを突破しようとしている動きを整理しました。
途中からSFみたいな話になりますが、これが全部現実に進んでいるというのが怖いです。
チップはどこまで小さくなれるのか
AIの計算能力を高めるには、チップをより小さく、より高密度にする必要があります。
現在すでに1.8ナノメートルという単位で製造が進んでいます。1センチの何千万分の1
という世界です。砂から作った素材をここまで精密に加工しているわけで、
改めて人類の技術力はマジでどうかしてるぜ!って思います。
ただ、小さくするにも物理的な限界が近づいてきています。
そのひとつが「銅線問題」です。
銅線では追いつかない——光通信への移行
チップ内で電気信号を伝えるために銅線が使われていますが、
銅線の通信速度がボトルネックになってきました。計算能力は上がっているのに、
データを運ぶ道路が渋滞している状態です。
そこで注目されているのが光通信への移行です。
おじさん世代には馴染み深い話だと思いますが、90年代のインターネットは
電話線(銅線)を使ったダイヤルアップ接続でした。1枚の画像を表示するのに
何十分もかかり、それだけで数万円の請求が来て社会問題になったりもしました。
その後、ISDN、ADSLと進化し、今では光回線が当たり前になっています。
アインシュタインが言うように、光より速いものは存在しないからです。
半導体の内部でも、まったく同じことが起きています。銅線から光通信へ。
この部品を担うメーカーとして注目されているのがLITE(ライトパス)とCOHR(コヒレント)です。
電力と冷却——AIが抱えるもうひとつの巨大な壁
AIの計算にはとんでもない量の電力が必要です。
現代社会の電力インフラでは到底足りないと言われており、
効率的な電力供給が急務になっています。そこで注目されているのが小型原子炉(SMR)です。
さらに、電力と並んで深刻なのが冷却問題です。
パソコンで重い作業をしていると本体が熱くなってファンがうるさくなりますが、
あれが巨大データセンター規模で起きているイメージです。
膨大な計算をすれば、それだけ熱が出る。その熱をどう逃がすかが大きな課題です。
データセンターの中は、とても寒い
冷却の話で思い出したのは、仕事で聞いてきた話です。私は派遣・SES(技術者を客先に常駐させる形)の営業をしているので、データセンターでサーバーの構築をしているエンジニアが周りに何人もいます。
データセンターの中は、非常に寒いそうです。機械にとって最適な温度に保たれているためで、行くと体調を崩す人が多いと聞きます。
AIのデータセンターでは、この「冷やし続ける」ためにかかる電力と設備が、さらに大きくなります。電力と冷却がボトルネックだという話は、その延長にあります。
イーロン・マスクが「宇宙にデータセンターを作ればいい」と言い出した

電力問題と冷却問題を一気に解決しようとしている人物がイーロン・マスクです。
発想がシンプルで、こうです。
「宇宙は寒いから冷却問題がない。地球より太陽光が強いから太陽光発電の効率も良い。
だったら宇宙(地球の衛星軌道上)にデータセンターを作ればいいじゃないか。」
SF小説かと思ったら、これが真剣に進んでいます。
ここで比較として出てくるのが日本のH3ロケットです。
打ち上げ失敗もあり、年6回の打ち上げ予定すら思うように進んでいない状況です。
一方、イーロン・マスク率いるSpaceXでは年間150回近くロケットを打ち上げています。
Xで動画を見たことがある方もいるかと思いますが、ロケットが逆噴射しながら
打ち上げ場に自力で戻ってくるあれです。私は最初にその動画を見たとき、
フェイク映像だと思いました。それくらい日本との技術差が開いている現実があります。
月面・火星・そしてロボットで工場を運用する未来
イーロン・マスクの構想は宇宙データセンターにとどまりません。
月面や火星への基地建設も計画しています。
ただ、そこに人間が行って建設作業をするのは現実的ではありません。
そこで登場するのがTALA(テスラ)が開発中の二足歩行ロボット「オプティマス」です。
ロボットに基地を建設させようという発想です。
その予行練習として、アリゾナの砂漠に「テラファブ」という巨大工場の建設が進んでいます。
なるべくロボットで建設し、なるべくロボットだけで工場内を運用する。
人間が入らない工場を地球で作って、宇宙でやる前に試している状態です。
まとめ 半導体の勉強をしていたら宇宙の話になった

銅線の限界→光通信、電力不足→小型原子炉と宇宙空間での太陽光発電、冷却問題→宇宙データセンター、建設問題→ロボット。半導体の課題を追いかけていくと、
すべてがつながっている巨大な産業シフトが見えてきます。

