比べてしまうのはなぜ?人と比べる自分を責めなくていい理由と対処法

氣分を上げる

同期が昇進したと聞いた日の帰り道。SNSで後輩の投稿を見てしまった夜。自分は何をやっているんだろう、と急に足が重くなる日があります。

比べるのはやめよう、と私も何度も思いました。それでも次の日にはまた比べています。

この記事は「比べるのをやめる10の方法」ではありません。比べるのはやめられない、というところから始めます。やめるかわりに、比べるときに使っている物差しを、外側から自分の内側へ付け替える。今日そのままできる形にして書きました。

比べてしまうのはなぜ?脳が勝手にやっている作業だからです

比べてしまうのは、性格の弱さではありません。自分がいまどこにいるのかを知るために、脳が自動でやっている作業です。だから意志の力で止めようとすると失敗します。止めるかわりに、比べたあとで脳が勝手につける「意味」のほうを外す。遠回りに見えて、こちらのほうが速い道になります。

人は、自分の価値をひとりで測れる物差しを持って生まれてきません。だから、まわりの人を借りて測ります。心理学ではこれを社会的比較と呼びます。給料も、見た目も、仕事の速さも、誰かと並べてはじめて「多い」「遅い」という言葉になります。

ここで起きているのは、実は二つの別々のことです。

  • 事実:同期が課長になった
  • 意味:だから自分は遅れている

一つ目は、誰が見ても同じ事実です。二つ目は、自分の脳がその場でつけた意味にすぎません。

このブログでたびたび取り上げている辻秀一氏の考え方に、「意味ダルマ」があります。出来事そのものには、本当は良いも悪いもない。認知する脳が、勝手に意味を貼りつけている、という見方です。休み明けの月曜日そのものは何も悪くない、という話を長期休暇明けの記事でも書きました。

比べることをゼロにはできません。事実の部分は、放っておいても脳が拾ってきます。私たちが手を入れられるのは、そのあとに貼りつく意味のほうだけです。

比べてしまう自分を責めなくていい理由は、数字が教えてくれます

自分ばかりが比べて落ち込んでいる、と感じる日があります。国の調査を見ると、そうでもありません。日本の13歳から29歳のうち、自分自身に満足していると答えた人は57.4%でした。5か国のなかでは最も低い数字です。ただし、この数字は5年前から12.3ポイント上がっています。

こども家庭庁が令和5年度に行った我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査から、「私は、自分自身に満足している」に肯定的に答えた割合を並べます。

そう思う(計)
日本 57.4%
アメリカ 73.2%
ドイツ 73.9%
フランス 75.6%
スウェーデン 72.3%

こう並ぶと、ほら日本人はどうせ自己肯定感が低いんだ、と言いたくなります。私も最初はそう読みました。ってかさすがにこの結果みたら日本の国の教育方針じゃね?…と口にしたくなってしまいます。

ところが同じ調査の前回、平成30年度の日本の数字は45.1%でした。5年で12.3ポイント上がっています。国民性という言葉で片づけると動かないものに見えますが、実際には5年で動いていました。

つまり、いま比べて落ち込んでいる自分は、多数派のほうにいるだけです。そして多数派の側の数字は、ちゃんと動きます。ここが、この記事でいちばん伝えたいところになります。

比べてしまうと結果まで落ちます。私が数字を追って売れなくなった話

比べることの本当の困りごとは、気分が沈むことではありません。目の前の相手が見えなくなって、結果まで落ちることです。私は営業でこれをやりました。数字を追いかけていた時期のほうが、売れていません。

オンラインセキュリティ研修のクラウドサービスを売っていた頃の話です。商談数や問い合わせ数といったKPI、つまり途中経過を測るための数字ばかりを追いかけていました。同じ数字で並べられるので、まわりと自分の位置がいつでも分かります。

数を追うので、時間に追われます。時間に追われるので、1件ごとの中身が薄くなりました。目の前の相手が何に困っているかを聞く前に、提案書を出していたと思います。

そんなとき、LINEの自動追加で、昔のお客さんが友だち候補に出てきました。名前を見た瞬間に、新卒の頃を思い出しています。

何も分かっていなかったけれど、とにかく一生懸命やって喜んでもらえたな。売上もどんどん上がって楽しかったな。がむしゃらにやっていた時はうまくいっていたのに、責任を持たされて効率を考え出してからおかしくなったよな。

知識がなかった新卒の頃のほうが売れていた、という事実が残りました。これは精神論ではなくて、扱っていた商品の構造の話だと今は思っています。形のないサービスは、買う側も「うちの何がどう良くなるのか」を言葉にできていません。売り手が相手を見て課題を特定しないと、そもそも売るものが決まらないのです。

外側の物差しを見ている間、目の前の人は見えていません。相手と比べても、数字と比べても、起きることは同じでした。

また、大して努力をしていないのにラッキーで結果を出してしまう人もいます。人と比べて落ち込んでも良いことは何もありません。

比べてしまう回数は、意志ではなく環境で決まります

比べる回数を減らしたいなら、気持ちを強くするより先に、環境を触るほうが早く効きます。目に入る量が減れば、比べる回数も減るからです。スマホと職場、この二つが入口になっています。まずは自分がどこで比べているのかを書き出すところから始めてください。

総務省の令和7年版 情報通信白書によると、LINEの利用率は2014年の55.1%から2024年には94.9%になりました。60歳以上に限ると11.3%から91.1%です。10年で8倍以上に増えています。もう「若い人のもの」ではなくなりました。

誰かの近況が目に入る回数は、10年前とは比べものになりません。意志が弱くなったのではなく、入口の数が増えただけです。

職場も入口になります。厚生労働省の令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)では、いまの仕事に強い不安や悩み、ストレスを感じる事柄がある労働者は68.3%でした。その中身の上位3つはこうなっています。

  • 仕事の量:43.2%
  • 仕事の失敗、責任の発生等:36.2%
  • 仕事の質:26.4%

なお、この68.3%という数字を前年の82.7%と並べて「改善した」と読むことはできません。厚生労働省が、設問の形式を変えたので比較には注意が必要だと注記しています。数字を借りるときは、こういう注記まで持ってくるようにしています。

上位に並ぶのは、量と失敗と質です。どれも、誰かと並べた瞬間に「自分は遅い」「自分は雑だ」に変わる項目でした。逆に言えば、並べる相手が目に入らなければ、ただの自分の仕事量に戻ります。

今日からできる環境の手当てを3つ書きます。

  • SNSを見る時間帯を、朝と寝る前から外す
  • 通知を切って、自分から開いたときだけ見えるようにする
  • 職場で比べが起きる場面(朝礼、数字の共有、雑談)を書き出して、その直後に予定を入れない

比べてしまう瞬間にやる、物差しの付け替え3ステップ

比べてしまった瞬間に、その場でやることを決めておきます。手順は3つです。気づく、事実だけ取り出す、自分の物差しに置き換える。所要時間は20秒くらいで、誰にも気づかれません。私はこれを電車の中でやっています。

1. 実況する

まず、比べたことに気づくだけです。このブログでは、イライラの実況という形で何度か試してきました。同じやり方を使います。

「お、いま比べたのであります」

心の中で、実況中継の口調で言うだけです。直そうとしません。気づくところまでが1つ目の仕事になります。

2. 事実だけ取り出す

次に、いま起きたことから事実だけを抜きます。

  • 事実:同期が課長になった
  • 意味:だから自分は遅れている

「遅れている」は、どこにも書いていません。締切のない競争に、自分で締切を書き足しているだけです。ここで意味のほうを、そっと横に置きます。

3. 自分の物差しに置き換える

最後に、外の物差しを内側のものに取り替えます。質問を一つ用意しておくと楽になります。

「今日、私は誰の何を良くしたか」

答えは小さくてかまいません。後輩の質問に5分使った、資料の1ページを読みやすくした、それで十分です。営業で売れていた頃の私がやっていたのも、結局これだけでした。

この質問には、比べる相手が出てきません。だから、答えた瞬間に物差しが自分の内側へ戻ります。没頭できた週末の記事で書いたことと、実は同じ入口です。恐らく、人のために何かをするようになると、目の前の損得で落ち込むことが減るような気がしています。情けは人のためならずってやつですね。しらんけど。

比べてしまう自分と、1週間つきあってみる

いきなり性格を変えようとすると続きません。1週間だけ、比べてしまう自分と一緒にいる練習をしてみてください。日ごとにやることを1つに絞ります。うまくできたかどうかは判定しません。判定した瞬間に、また外の物差しが戻ってくるからです。

やること
1〜2日目 比べたら「お、比べたのであります」と実況するだけ
3〜5日目 事実と、自分がつけた意味を、頭の中で2行に分ける
6〜7日目 寝る前に「今日、誰の何を良くしたか」を1行書く

判定しないというところが、いちばんつまずきます。このブログで何度か書いてきたエフィカシー、つまり「できてもできなくても、できると自己評価し続ける」という考え方が、ここで効いてきました。

7日目にできなくても構いません。1日目にできた人はいないからです。比べてしまう自分を消そうとしないでください。物差しを付け替えるのは、消すよりずっと軽い作業です。

この記事で使った数字の出典

数字は次の3つから取りました。いずれも公的機関が公開している資料です。

  • こども家庭庁「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査(令和5年度)」対象は13〜29歳、日本・アメリカ・ドイツ・フランス・スウェーデンの5か国:報告書(PDF)
  • 厚生労働省「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況」:概況(PDF)
  • 総務省「令和7年版 情報通信白書」コミュニケーションツール・SNS:白書のページ

今日、また誰かと比べてしまったら、それは脳がちゃんと働いている証拠です。責める場所を間違えないでください。付け替えるのは、自分ではなく物差しのほうでした。

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