存在しない、しかも未来の相手と喧嘩していた金曜日
木曜日は洗面所でパラレルワールドの社長にイライラしていましたが、金曜の朝の洗面所は、調子が良かったんです。ECの改善案を前向きに考えていて、頭の中がちゃんと今と未来の「やること」に向いていました。ここまでは良かったんですよ。
問題は電車でした。気づいたら、また仮想空間に入っていました。しかも今回はひどくて、「転職した先の、人事とのバトル」を考えていたんです。
まだ応募すらしていない会社の、会ったこともない人事と、頭の中でやり合っていました。存在しない相手というだけでも無駄なのに、今回は未来の存在しない相手です。二重に架空じゃないですか。
一応、「これはいつものトラップに引っかかっているであります」と実況はしました。全くの無駄だし、本当に時間がもったいないな、と思ったところまでは良かったんです。
でも会社に着いたら、うちの社長からの指示が来ていて、無駄な作業でイライラしっぱなしになって、そのあとは実況することすら忘れていました。正直、金曜は負けの日でした。
ところが土日は、会社のことを一度も思い出さなかったんです
面白いのはここからです。土日は、会社のことをほとんど思い出しませんでした。イライラらしいイライラが、まるでなかったんです。
何をしていたかというと、友人と飲みに行って、ちいかわの映画を見て、あとは株式投資の分析に没頭しながら、合間に歴史のYouTubeを見て過ごしていました。それだけです。
平日はあんなに、いもしない相手と喧嘩していた私と、同じ人間とは思えないくらいご機嫌でした。
ここで私は、ちょっと立ち止まって考えたんです。平日の電車では存在しない未来の人事とやり合っていて、週末は同じ私がやたらご機嫌でした。この差って、何なんだろう、と。
で、たぶんですけど、答えは「没頭していたかどうか」な気がしたんです。
没頭している間は、妄想を作る余白がないんじゃないか
あとから調べたら、やっぱりそういう話がありました。心理学者のミハイ・チクセントミハイが提唱した「フロー」という状態です。
フローというのは、今やっていることに完全に浸って、時間も自分のことも忘れてしまうような没頭の状態を言います。チクセントミハイは、この状態に入る条件として、目標が明確なことと、課題の難しさと自分のスキルのバランスが取れていることを挙げています。簡単すぎると退屈になって、難しすぎると不安になる。ちょうどいい難しさのときに、人は没頭に入りやすいそうです。
週末の私の株分析、まさにこれだった気がします。NOWの決算からSaaSは終わりなのか?というちょうど歯ごたえのある分析対象で、うまく集中できていました。没頭している間って、頭の中に「目の前にいない誰かと喧嘩する」ための余白が、そもそもなかったんですよね。
これって、前回書いたマインドワンダリングの話の、ちょうど裏返しなんだと思います。心が今と別の場所をさまようと不幸になる、という研究でした。逆に言えば、今にしっかり没頭していれば、心はさまよいようがない。週末の私は、たまたまそれができていた気がします。やはり【今を生きる】って大事。
ついでに言うと、これは辻秀一氏の言う「ご機嫌=ゆらがず、とらわれず」の状態とも、たぶん地続きなんじゃないかなと思っています。没頭しているとき、私は社長にも架空の人事にも、とらわれていませんでした。
ひとつだけ正直に補足すると、チクセントミハイは「ただテレビをぼーっと眺めているのはフローとは言えない」とも言っています。フローは、自分のスキルを使って能動的に取り組むときに起きるものらしいんです。だから週末に一番効いたのは、映画をぼんやり見た時間じゃなくて、たぶん株分析にガッツリ入り込んだ時間だった気がします。ちいかわは、まあ、それはそれで幸せだったので良しとします。
じゃあ平日にどうするか、を考えてみました(まだ仮説です)
ここで私は、いつもの間違いをやりそうになりました。「よし、イライラを我慢しよう」と気合いを入れる、あれです。これ、たいてい失敗するんですよね。
そうじゃなくて、週末が教えてくれたのは、たぶん逆の発想な気がします。イライラを我慢するんじゃなくて、妄想が湧きやすい空白の時間に、先回りで没頭できるものを置いておく、という考え方です。
私にとっての一番の危険地帯は、あの電車の時間です。手持ち無沙汰で、頭が勝手にパラレルワールドに旅立つ時間帯なので。ここに、株の分析でも、読書でも、何か能動的に頭を使うものを先に入れておいたらどうかな、と思っています。
もちろん、実況もやめません。実況は「気づく」ための練習として続けます。そのうえで、気づいたら没頭に切り替える、という二段構えを、これから試してみようと思います。観察したいのは、このあたりです。
- 電車で先に没頭対象を置いておくと、仮想空間に入る回数は減るのか
- いったん妄想に入ってしまったあとでも、没頭に切り替えて抜け出せるのか
- うちの社長の件みたいに、目の前で実際に起きるイライラには、没頭は効かないんじゃないか。ここは正直あやしいです。イライラしている自分に気付くための実況に集中します。
平日と週末で、私の心はこう違いました
| 平日(金曜) | 週末(土日) | |
|---|---|---|
| イライラの相手 | 存在しない未来の人事、うちの社長 | ほぼゼロ。会社を思い出しもしなかった |
| 頭の居場所 | 仮想空間。今にいない | 今の目の前。株分析や映画に没頭 |
| やっていたこと | 手持ち無沙汰の電車、無駄な作業 | 能動的に頭を使う分析、友人との時間 |
今日のまとめ
- ノウハウ:フロー(ミハイ・チクセントミハイ)=今に完全に没頭し、時間も自分も忘れる状態。条件はチャレンジとスキルのバランス。没頭している間は、心がさまよう余白がない
- 私がやったこと:金曜は電車で未来の人事と喧嘩して負け。土日は株分析などに没頭して、イライラがほぼ消えた
- 気づき:敵は目の前にも、未来にもいませんでした。没頭している時間だけ、妄想が起きなかった
- できなくてもいい:平日に毎回フローへ入るのは、たぶん無理です。数十年かけた思考の癖なので、1日や2日でどうにかしようとは思っていません
最後に
もしあなたも、気づいたら頭の中でいない誰かと言い合っているなら、無理にそれを止めようとしなくてもいいのかもしれません。止めるより、あなたが没頭できるものを一つ思い出すほうが、たぶん早い気がします。
それが仕事でも、趣味でも、なんでもいいと思います。私はたまたま株の分析でしたけど、あなたの「これに入り込むと時間を忘れる」というものは、きっと別にあるはずです。
数十年かけた思考の癖は、実況を数日やったくらいでは治りません。私もまだ、しょっちゅう仮想空間に連れていかれます。それでも何度でも間違えながら、少しずつ手放していけたらいいなと思っています。


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