完璧主義の治し方|基準を下げるより「終わりを先に決める」5つの手順

氣分を上げる

提出前に何度も読み返してしまう。8割できているのに、最後の2割が気になって手が離せない。そうやって時間だけが過ぎて、自分にがっかりする。

そんなとき、検索すると出てくるのはたいてい「基準を下げましょう」「60点でいいと思いましょう」という助言です。私はこれを何年も試して、一度もうまくいきませんでした。基準を下げようとすると、今度は手を抜いている感じが残って、余計に落ち着かなくなるからです。

基準そのものには、ここでは触りません。触るのは「終わりの決め方」のほうです。国の調査と海外の研究の数字を三つ並べながら、今日から試せる手順まで書きます。

完璧主義の治し方で「基準を下げる」がうまくいかない理由

完璧主義の治し方として広まっている「基準を下げる」は、痛みの出どころとずれています。つらいのは基準が高いことではなく、どこまでやれば終わりなのかを、自分ひとりで判定し続けていること。判定の材料が「自分の納得」しかないので、いつまでも合格が出ません。だから下げるより、終わりを先に置くほうが効きます。

考えてみると、終わりが決まっている作業で苦しくなることは、あまりありません。電車に乗る、皿を洗う、書類に印鑑を押す。どれも「これで終わり」の形がはっきりしています。

反対に、資料づくり、メールの文面、SNSの投稿。この手の作業には終わりの線がありません。線がないところに立たされて、「まだ甘い」と自分に言い続けている状態。それが完璧主義のしんどさの正体だと、私は思っています。

つまり直す先は、性格ではなく手順のほうです。

完璧主義とは?3つに分かれていて、増えていたのは1つだけでした

完璧主義とは、現実離れした高い基準と、それに届かない自分への厳しい採点が組み合わさった性格の特徴を指します。心理学ではこれを3つに分けて扱います。自分に向けたもの、他人に向けたもの、そして「他人が自分に完璧を求めている」と感じるもの。この3つ目が、いちばん増えていました。

イギリスの2人の研究者が、1989年から2016年までの27年ぶんの調査を集めて比べています※1。アメリカ・カナダ・イギリスの大学生4万1641人、164の標本を横断した分析です。

どの向きの完璧主義か 中身 27年間の増え方
自分に向けたもの 自分に非現実的な期待をかけ、自分の評価に厳しい 10%
他人が求めていると感じるもの 周囲が自分に過大な要求をしていて、完璧でなければ受け入れられないと感じる 32%
他人に向けたもの 周りの人に現実離れした基準を課し、批判的に見る 16%

自分で自分に課す基準は10%しか増えていないのに、「求められている感じ」は32%、3倍以上の速さで増えました

ここが肝心なところで、増えたほうは自分の中に無いものです。自分の基準なら下げられますが、「周りが求めている気がする」は下げようがありません。「基準を下げましょう」という助言が効かない理由は、たぶんここにあります【推測/確信度:中】。相手のいる感覚に、自分ひとりでダイヤルを回そうとしているのだから、回らなくて当然という話です。

なお心理学の論文では「完全主義」と書かれることが多く、「完璧主義」は日常語のほうの綴りです。指しているものは同じ。

完璧でいようとするのは、失敗した自分を人に見られないための盾でもあります。その「盾としての完璧さ」を一冊まるごと扱っているのが、ブレネー・ブラウンの本当の勇気は「弱さ」を認めること(サンマーク出版)です。

完璧主義で終われないのは、自分の見積りが7割外れるからです

「あと少しで終わる」という自分の感覚は、思っているより当たりません。カナダの大学で、卒業論文を書いている学生に完成日を予測させ、実際の日数と突き合わせた研究があります※2。参加者37人のうち、期間内に書き上げた33人ぶんの集計です。予測どおりに終えられた人は29.7%。残りの7割は、自分の見込みを追い越されました。

数字はもっと極端です。

  • 「いちばんうまくいった場合」の予測:27.4日
  • 「これでいけると思う」ふつうの予測:33.9日
  • 「いちばん悪くいった場合」の予測:48.6日
  • 実際にかかった日数:55.5日

驚くのは最後の一行の位置。いちばん悪い場合を想像して出した48.6日ですら、現実に6.9日足りませんでした。悲観的に見積もったつもりが、まだ楽観だったという結果。

ふつうの予測に対する実際の比は約1.6倍。この数字は、後で使います。

ここから言えるのは、「終わったと感じるまでやる」を終了条件にしてはいけないということ。その感覚は、そもそも当たらない道具です。当たらない道具で合否を決めているから、いつまでも合格が出ません。

完璧主義がつらくなるのは「質」ではなく「量」の側でした

完璧主義のつらさは、質へのこだわりから来ていると思われがちです。ところが働く人の実感を集めた国の調査を見ると、順番が違いました。厚生労働省の令和6年の調査で、強い不安・悩み・ストレスがあると答えたのは68.3%※3。その中身の一位は「仕事の量」で43.2%でした。

ストレスの中身 割合
仕事の量 43.2%
仕事の失敗、責任の発生等 36.2%
仕事の質 26.4%
対人関係(セクハラ・パワハラを含む) 26.1%

「仕事の質」は三番目で26.4%。質へのこだわりは、めぐりめぐって「量」の顔をして戻ってきます。1件あたりに1.6倍の時間をかければ、こなせる件数はその分だけ減るのだから、当たり前といえば当たり前です。

この調査、令和5年は設問の形が違っていて、同じ質問で並べた数字ではありません。年ごとの増減をここで語るのは避けますが、中身の順位が「量」から始まっているという一点は、そのまま受け取ってよさそうです。

つまり、丁寧さを削らなくても、終わりの線を引くだけで量の圧は下がります。削るのは中身ではなく、判定にかけている時間のほうです。

完璧主義をゆるめられた日|勉強の終わりを、相手に決めてもらっていた話

完璧主義がゆるんだのは、気持ちを切り替えた日ではなく、終わりの線を自分の外側に置けた日でした。私は同じ時期に、法律の勉強はきちんと終われて、資料づくりだけは何度も終われませんでした。差は真面目さではなく、合格を出す人が自分だったか相手だったかです。

新卒で営業をしていたころ、私は知識の量にずっと自信がありませんでした。それでも、ひとつだけ最後まで手を抜かずに勉強したものがあります。法律です。

理由は、上司に評価されたいからでも、試験に受かりたいからでもありませんでした。違法なことを知らずに進めて、相手に迷惑をかけたくなかったからです。

いま振り返ると、この動機のおかげで勉強が終われていました。「相手に迷惑がかからない線まで」という終わりが、自分の出来ばえの外側にあったからです。完璧に覚えたかどうかは自分では判定できませんが、この契約でお客さんが困らないかなら判定できます。

反対に、資料づくりでは何度も終われませんでした。「完璧に見えるか」を基準にしていたので、判定する人が自分しかいなかった。同じ人間が、同じ日に、片方は終われて片方は終われない。差は真面目さではなく、終わりの線をどこに置いたかだけでした。

完璧主義の治し方5つ|今日から終わりを先に決める手順

完璧主義の治し方として私が続けているのは、始める前に終わりのほうを書いてしまう方法です。作業に入ってからでは、もう自分の感覚しか判定の材料が残っていません。着手する5分前が、いちばん冷静に線を引ける時間です。5つとも、紙一枚とタイマーがあれば今日から試せます。

  1. 終わりの一行を、始める前に書く。 「よい資料をつくる」ではなく「先方が来週の会議で説明できる状態」と書く。判定の主語を自分から相手に移す
  2. 持ち時間を先に置く。 自分の見積りに1.6を掛けて予定に入れる。33.9日が55.5日になった比です。増やしておけば、はみ出したときに焦らずに済む
  3. 「いちばん悪い場合」も予定表に入れる。 悲観的な見積りでも48.7%しか間に合っていません。最悪を想定するのではなく、最悪の日を先に空けておく
  4. 判定を一人で抱えない。 先の国の調査では、ストレスを相談できる人がいる労働者が94.6%、そのうち実際に相談したことがあるのは74.7%※3。相手はいるのに、4人に1人は聞いていません。「これで用は足りますか」の一言で、終わりの線は他人に引いてもらえます
  5. やり直しは回数で止める。 「納得するまで」ではなく「見直しは2回まで」。回数なら、感覚と関係なく終わります

どれも基準を下げていません。丁寧さはそのままに、終わりの判定だけを自分の手から離すやり方です。

私はこの5つのうち、2番の「1.6倍」がいちばん効きました。予定を1.6倍にしたら、はみ出しても「想定の範囲」になり、はみ出した自分を責める時間がまるごと消えたからです。

なお、眠れない・食べられないといった状態が続いていたり、日常が回らないほどつらいときは、この記事のような工夫より先に、医療機関や公的な相談窓口といった専門家を頼ってください。ここで書いたのは、あくまで考え方の癖に対する日常の工夫です。

完璧主義は、人に迷惑をかけたくない気持ちの裏返しでもあります。その気持ちごと捨てる必要はありません。線を引く場所を、自分の納得から相手の用へずらすだけ。それだけで、8割で手を離せる日が増えていきます。

自分の基準の置き場所そのものが揺れていると感じるときは、自分軸とは?他人軸との違いと、わがままにならない見つけ方も合わせてどうぞ。周りの目が気になって手が止まるタイプなら、承認欲求が強い人の特徴7つのほうが近いかもしれません。

出典

Amazonのアソシエイトとして、カラフル坂は適格販売により収入を得ています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました