2026年6月に連載再開したハンター×ハンター。前回の記事では、ハンター協会がカキン王国の巨大船「ブラック・ホエール1号」に乗るまでの、ドロドロした国際政治の舞台裏を解説しました。
今回スポットを当てるのは、船の1層(最上階)で行われているカキン王国の狂ったデスゲーム「王位継承戦」です。
ジャンプ本誌や単行本を読んでいて、「誰が誰の部下だっけ?」「なんでこの部屋はこんなにギスギスしてるの?」と混乱した方も多いはず。あととにかく登場人物多すぎ。誰が誰の敵で誰の味方かぜんぜんわかりません。
その原因は、継承戦のルールに隠された「合法的なスパイ・暗殺システム」にありました。クラピカが護衛する第14王子ワブルの絶望的な状況と、第1王子ベンジャミンの圧倒的な特権をスッキリ整理します!
部屋の同行者は一律「15人」という絶対ルール
王位継承戦が始まると、各王子の居住区(部屋)に入って寝食を共にできる「従事者(護衛や召使いなど)」の数は、カキン王室のルールによって一律【1部屋15人】と厳格に決められました。
プロハンターであるクラピカやビル、あるいは他の王子たちが個人的に雇っているボディーガード(私設兵)も、すべてこの「15人枠」の枠取り合戦の中で部屋に潜り込んでいます。
一見、全員に平等に与えられた枠に見えますが、ここに「母親(王妃)の身分の格差」が乗っかることで、下位の王子たちにとっては地獄のようなルールへと変貌します。
下位王子の絶望:上位王妃から送り込まれる「強制監視兵」
カキン王国は一夫多妻制であり、8人の王妃がいます。王位継承戦のルールには、以下のような恐ろしい「王妃の特権」が存在します。
【王妃所属兵のルール】
上位の王妃は、自分より身分の低い王妃(およびその子供である王子)の部屋へ、警護という名目で「王妃所属の兵(監視員)」を強制的に送り込むことができる。下位の王妃側はこれを拒否できない。
これにより、もっとも身分が低い第8王妃オイトと、その実子である最下位の第14王子ワブルの部屋は、スタート時点で以下のような絶望的な内訳になってしまいました。
| 区分 | 人数 | 具体的な詳細 |
|---|---|---|
| 上位王妃からの監視員 | 7人 | 第1〜第7王妃から送られた、合法的なスパイ兼暗殺要員。 |
| 外部公募のプロハンター | 5人 | クラピカ、ビル、サイールド、カートン、トカート。 |
| オイト王妃側の純粋な味方 | 3人 | 身の回りの世話をする侍女など。 |
| 合計 | 15人 | これで枠が完全にロック(満室)されます。 |
15人しか入れない部屋なのに、最初から敵が7人も正規メンバーとして居座っているのです。そのためオイト王妃は、自分が信頼している私設兵をほとんど連れてくることができず、外部から公募したクラピカたちに頼るしかありませんでした。
※なお、このあと物語は急展開を迎え、謎の襲撃や錯乱によって、出港直後にこの15人の大半が死亡し、部屋は一気にガラ空きになります。
第1王子ベンジャミンだけが持つ「軍権チート」のカラクリ
連載再開に向けてコミックスを読み返していて疑問に思ったのが、なんでベンジャミンは自分の部下をクラピカがいる部屋へ送り込めたんだっけ?ということ。完全に忘れていたので調べ直しました。
下位王子がスパイに怯える一方で、圧倒的な武力で他を圧倒しているのが第1王子ベンジャミンです。なぜ彼の部下は、他人の部屋にズカズカと入り込んで暗殺を仕掛けられるのでしょうか?
実はベンジャミンは、単なる王子ではなく「カキン国王軍の副最高司令官」という軍のトップの肩書を持っています。彼はこの「公権力」をハッキングして、以下の戦略を実行しました。
- 軍のトップとして、「すべての王子の部屋の安全を守るため、国王軍の正規兵を各部屋に警備として派遣する」という軍事命令を出す。
- 国家の正式な軍令なので、他の王子(特に下位王子)は拒否できない。
- しかし、実際に派遣された軍人の中身は、全員が「ベンジャミンに絶対の忠誠を誓う彼の私設兵(しかも全員が念能力者)」だった。
つまりベンジャミンは、「15人の従事者枠」とは全く別の「国家の防衛システム」を私物化して、合法的な暗殺部隊を他人の部屋に常駐させているわけです。これが他の王子にとって絶望的な脅威となっています。
第2回まとめ:クラピカの「念講習会」の本当の狙い
これらを踏まえると、35巻〜36巻でクラピカが始めた「全王子の部屋の人間を集めて、念能力を教える講習会」の本当の凄さが分かります。
クラピカの狙いは、親切で念を教えているのではありません。各部屋からベンジャミンのスパイ(国王軍)や王妃の監視兵を講習会に引っ張り出す、そして念能力を教えることで念能力者を増やすことで、「膠着状態を作り、ワブル王子の部屋がこれ以上暗殺されるのを防ぐための時間稼ぎ」だったのです。
でも、この講習会がきっかけで船全体の「念」のパンデミックが加速していくことに……。
次回は、これまた難解なカキン王室のドロドロの血縁関係に迫ります。「同じ母親から生まれたはずの兄弟が、なぜあんなに顔も性格も違うのか?」。現実の歴史(後宮や大奥)のシステムをオマージュしたような、カキン王王室の最大の禁忌について徹底考察します!お楽しみに!

