Wan 2.2 の高速化LoRAを入れなかった理由|ライセンスが商用不可だった体験談【第13回】

この記事の結論(先に3つだけ)

結論から書きます。動画を作るAI「Wan 2.2」を速くする部品(LoRA)を見つけ、入れる直前まで進みました。ところが、ライセンスの本文を読むと「商用不可」でした。AIは1バイトもダウンロードせずに止まり、代わりに設定の組み合わせだけで、用途別の3つの型を用意しました。

  • 速くする部品は、5秒の動画を約17分から約2分にできる見込みでした。 ただし計算上の数字です
  • ライセンスは CC BY-NC-SA 4.0(営利目的では使えない)でした。 私は全部の事業で商用に使うので、入れないと決まりました
  • 「ライセンス欄が空」は「自由に使える」ではありませんでした。 明示されている唯一の条件を、厳しいほうとして採りました

50代・非エンジニアです。プログラミングはできません。

前回は、自分の Windows パソコン(RTX 3060・12GB)で、静止画を動かして動画にする話です。1280×704の大きさで5秒の動画を作ると、1本に16分56秒かかっています。

2026年9月11日の夜中、私はAIにこう伝えました。

動画生成にめちゃめちゃ時間が掛かったので短くしたい

速くしたい理由もあります。このとき私は、5秒の動画を3本つないだ15秒のショート動画を作る計画を進めていました。AIの見積もりでは、3本作るのに、速くする部品が入れば約5分、入らなければ約51分かかります。

私が「お願いします」と返すと、AIは Windows のAIに作業を頼みました。クラウドのAIからは Windows に直接届かないので、私が Windows でAIを1回起動して、依頼の文面を貼るだけで済む形にしてくれています。

今回は、その「短くしたい」がどう決着したかの記録です。結末を先に書くと、いちばん効きそうな手は使えませんでした。 理由は技術ではなく、ライセンスでした。

前々回の Blogger API の話 とは別の道具の話です。


Wan 2.2 の高速化:本命は「4ステップ化」の LoRA だった

AIが本命に挙げたのは、Wan 2.2 5B を「4ステップ」で動かせるようにする LoRA でした。 LoRA とは、AI本体に後から足す小さな追加部品のことです。本体を入れ替えずに、絵柄や動き方、計算の手順を変えられます。

動画を作るAIは、ぼやけた状態から少しずつ絵をはっきりさせていきます。この「少しずつ」の回数をステップと呼びます。私の設定は20ステップでした。これを4ステップに減らせれば、単純に計算が5分の1になります。

AIは、これまでの実測から時間の計算式を立てていました。

  • 時間 ≒ 画面の大きさ × ステップ数 × コマ数

この式で、ある実測(1280×704・30ステップ・49コマで7分26秒)から別の設定(704×480・20ステップ・49コマ)を予測すると、1分51秒になります。実測は2分00秒でした。誤差は8%で、予測に使える式だと分かりました。

もう1つ、「cfg」という設定にも速くなる仕掛けがありました。cfg は、指示文ありの計算と指示文なしの計算を毎回2回ずつ走らせる仕組みです。cfg を1.0にすると2回目が省かれて、計算量が半分になります。 その代わり、「これは描かないで」という打ち消しの指示が効かなくなります。

4ステップ化の LoRA は、この cfg 1.0 と組み合わせて使う前提でした。


5B 用の LoRA は「無い」と「ある」が混ざっていた(独自)

ここが、今回いちばん間違えやすかったところです。 5B 用の高速化 LoRA について調べると、「無い」という情報と「ある」という情報が混ざっていました。

AIは、配布元4件を1つずつ開いて確かめています。

配布元 5B に使えるか 確かめた中身
lightx2v(Lightning) 使えない 予定表に「5B の4ステップ版」が未完了の印で載っていた
lightx2v(Distill-Loras) 使えない ファイル名がすべて大きい版(A14B)用
quanhaol(TI2V-5B-Turbo) 使える 「1280×704・121コマを4ステップで」と明記
Kijai(WanVideo_comfy) 使える 上の Turbo を LoRA の形にしたもの(332MB)

AIの記録には、こう書いてありました。検索結果の要約は「5B は Lightning に含まれる」と言っていた。でも、公式のページを開いたら、まだ予定の段階だった。

私の保管庫には「検索結果の抜粋やまとめ記事だけで断定しない」という決まりがあります。それがそのまま効いた場面でした。

使えそうなのは quanhaol の Turbo 版と、それを LoRA にした Kijai 版です。予測では、1280×704・121コマが約1分13秒になる見込みでした。

ただし、AIはこの時点で1つ引っかかっていました。Turbo 版のモデルの説明ページに、ライセンスの欄が無かったのです。 検索結果は「Apache 2.0(商用可)」と言っていましたが、確かめていません。

そこでAIは、Windows で動くAIへの依頼書のいちばん最初の手順に「ライセンスの本文を読む」を置きました。商用不可なら、ここで止めるという分かれ道も書いてあります。


Wan 2.2 Turbo LoRA のライセンスを読んだら「商用不可」だった

Windows のAIが LICENSE(ライセンス)の本文を開くと、1行目は「Attribution-NonCommercial-ShareAlike 4.0 International」でした※1。 CC BY-NC-SA 4.0 と呼ばれるライセンスです※2。

それぞれの意味をかみ砕くと、こうなります。

  • BY(表示):作った人の名前を表示する
  • NC(非営利):営利目的では使えない
  • SA(継承):作り直したものも、同じ条件で配る

本文には「NonCommercial purposes only(非営利の目的に限って)」とあり、非営利の定義は「主に商業上の利益や金銭的な対価を目的としないこと」でした。

私は全部の事業で商用に使います。 だから、この条件には合いません。

Windows のAIは、依頼書の「商用不可ならここで止めて報告」に従いました。LoRA は1バイトもダウンロードしていません。

AIは、ライセンスを3件の場所で確かめています。

調べた先 結果
GitHub の LICENSE の本文 CC BY-NC-SA 4.0(商用不可)
Hugging Face のモデルの説明ページ ライセンスの欄が無い
LoRA 版の配布元の説明ページ ライセンスの欄が無い(元のページへのリンクだけ)

ここで AIは、はっきり書いていました。「ライセンスの欄が無い=自由に使える」ではない。 明示されているただ1つのライセンスが CC BY-NC-SA 4.0 なので、厳しいほうで確定した、と。

私の側で決めることは、何もありませんでした。依頼書に分かれ道まで書いてあったので、AI同士で最後まで決着していたからです。


「30分かかった」は体感で、実測は16分56秒だった

この区切りでは、私の感覚のほうも1つ外れていました。 私は「約30分かかった」と伝えていましたが、それはストップウォッチで測った数字ではなく、体感でした。

同じ設定の実測は、16分56秒です。体感の30分は、実測のほぼ2倍でした。

そのため、「Turbo で30分が3分になる」という見込みも、正しくは「16分56秒が約2分になる」だった、とAIは直しています。

数字で測ってから判断する、という順番がここでも効きました。


Wan 2.2 を LoRA なしで速くする:用途別の3つの型

LoRA が使えないので、AIは「設定の組み合わせ」で用途別の型を3つ作りました。 どれも、開いて Run を押せば動く形で保存してあります。

型の名前 設定 使いどころ 実測
試し撃ち 704×480/49コマ 動きの確認 1分57秒
5秒の流れ確認 704×480/121コマ 5秒の流れを見る 4分53秒
本番 1280×704/49コマ 仕上げ 5分19秒

3つとも、20ステップ・cfg 5 のままです。前回つまずいた「画像を読み込む」部品も、最初から有効にしてあります。

型の名前どおりに使うと、こうなります。

  1. 試し撃ち(約2分)で、動き方の指示を決める
  2. 5秒の流れ確認(約5分)で、5秒全体の動きを見る
  3. よければ、本番(約5分)で大きく作る

大きな画面の5秒の動画(約17分)は、どうしても要るときだけにします。

依頼の中で、AIはLoRA以外の手も3つ検討していました。

  • 商用可の4ステップ LoRA を探す → 5B 用は見つからなかった。商用可(Apache 2.0)の LoRA はあるが、大きい版(A14B)用だけ※3
  • 設定の組み合わせで詰める → これを実行した(上の3つの型)
  • 配布元に商用利用してよいか問い合わせる → 外部への連絡になるので、AIは実行していない

大きい版(A14B)は、12GBのグラフィックボードでは現実的でない見込みです。ダウンロードだけで数十GBになり、パソコンの空き容量(66GB)とも相談が要ります。こちらは試していません。


時間はコマ数の「2乗」で伸びるのか:実測で確かめた

AIは、新しく1本測って、「コマ数を増やすと時間がどう伸びるか」も確かめました。 依頼書には「時間はコマ数の2乗で効くのでは」という見立てが書いてありました。

4件の実測がそろったので、比べられます。

大きさ 49コマ 121コマ 時間の比 コマ数の比
704×480 1分57秒 4分53秒 2.50倍 2.47倍
1280×704 5分19秒 16分56秒 3.19倍 2.47倍

結果は「半分あたり」でした。

  • 小さい画面(704×480)では、ほぼコマ数の比どおり(2.50倍)
  • 大きい画面(1280×704)では、コマ数の比を超えた(3.19倍)

AIの説明はこうです(確信度は中の推測)。AIの計算の一部は「量の2乗」で増え、残りは「量に比例」して増えます。量が小さいうちは比例のほうが目立ち、量が大きくなって初めて2乗が顔を出す。 小さい画面ではまだ比例のまま、大きい画面で2乗が効き始めた、という形です。

私の言葉で言い直すと、大きい画面で長い動画を作ると、時間は思った以上に伸びるということです。だから「本番」の型は、大きい画面でも49コマに抑えてあります。


おわりに:Wan 2.2 の高速化でわかったこと

今回の区切りで分かったことは、次の4つです。

  1. 速くする部品があっても、ライセンスで使えないことがある。 説明ページだけでなく、LICENSE の本文まで読む
  2. 「ライセンス欄が空」は「自由」ではない。 明示されている条件を、厳しいほうとして採る
  3. 体感の時間は、実測の2倍になることがある。 判断の前に測る
  4. 部品が使えなくても、設定の組み合わせで用途別の型は作れる。 試し撃ちは約2分です

かかった費用は0円です。LoRA はダウンロードもしていません。

AIが止まった場所は、「商用不可ならここで止める」と依頼書に書いてあった、その場所でした。止まる場所を先に決めておくと、AIは迷わずそこで止まります。 前回までの話とも共通する点でした。

まだ確かめていないことも残っています。保存した3つの型は、AIが中身を読み出して確かめましたが、私がブラウザで開いて Run を押すところまでは試していません。


出典

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