実家の庭に、大きな赤松があります。
屋根より高く、枝の幅も広い松です。家は築200年ほどの旧家で、今の住まいからは電車で2時間かかります。
この松は、親が年に1回、植木屋さんに頼んで手入れをしてもらっています。「結構費用が掛かっているらしい」とは聞いていますが、いくらなのか、私は知りません。どこの植木屋さんに、どんな作業を頼んでいるのかも、親がやりとりしているので把握できていません。
友人のお父さんが亡くなったのをきっかけに、自分の実家と親のことを考えるようになりました。そのとき、庭の松についても思ったことがあります。
把握しないといけないと、今回思った。
とはいえ、何を把握すればいいのかが分かりません。松はいつ切るものなのか。親が頼んでいる年1回は、どの作業にあたるのか。そこで、松の剪定の時期から調べてみることにしました。調べて分かったことを、順番に書いておきます。
松の剪定の時期はいつ?まず年2回の作業を知りたい

松の剪定の時期は、大きく分けて年2回です。 1回目は5月ごろの「みどり摘み」で、春に伸びた新芽を手で摘んで、樹形を整えます。2回目は秋から冬の「もみあげ」で、古い葉や混みすぎた葉を手でむしり、日当たりと風通しをよくします。ほかの庭木のように「年1回、ハサミで刈り込む」木ではない、というのが最初に知っておきたい点です。
長野県林業総合センターの資料では、松の剪定には「みどりつみ」と「葉むしり(もみあげ)」という、松に特有の方法があると説明されています※1。どちらも、枝を切るとき以外はハサミを使わず、手で丁寧に作業するのが基本です。
時期の目安を表にすると、こうなります。
| 作業 | 時期の目安 | 何をするか |
|---|---|---|
| みどり摘み | 5月ごろ(4月〜5月末) | 春に伸びた新芽(みどり)を指で摘む |
| もみあげ・透かし剪定 | 秋〜冬(10月〜1月) | 古い葉・増えすぎた葉を手でむしり、混んだ枝を切る |
時期は、長野県の資料※1と、くらしのマーケットの解説※2をもとにまとめました。
ここで分からなくなるのが、「うちの松は年1回」という点です。年2回が基本なら、親が頼んでいる1回はどちらなのか。それとも、2回分をまとめてやってもらっているのか。ここは、親に聞かないと分からないことの1つ目になりました。
うちの松は赤松。松の種類で何が変わる?
実家の松は赤松です。アカマツは本州・四国・九州に分布するマツ科の常緑高木で、別名を「メマツ」といいます※3。アカマツとクロマツの雑種もあり、見分けにくい木もあります※3。
みどり摘みともみあげという年2回の作業の考え方は、アカマツでもクロマツでも同じです。私が調べた範囲では、種類で「時期そのもの」が大きく変わるという公的な説明は見つかりませんでした。【推測】細かな加減は木の状態で変わるはずなので、そこは植木屋さんの判断に任せる部分だと考えています。
松の剪定の時期に行う「みどり摘み」とは?5月に何をする?
みどり摘みは、5月ごろに新しく伸びた緑色の芽(みどり)を指先で摘み取る作業です。 1か所から3〜6本ほど出るみどりのうち、真ん中で強く伸びる1本を根元から摘み、残りも3分の1ほど摘みます。手で摘み取れるくらいの柔らかさのときが適期です。木の成長を抑えて、引き締まった形を保つために行います。
長野県林業総合センターの資料では、みどり摘みの手順が次のように書かれています※1。
- 5月ごろ、新しく出た緑色の新梢(みどり)の一部を、指先で摘み取る
- みどりは1か所から3〜6本ほど出る。そのうち、真ん中で強く伸びている1本を根元から摘む
- 残ったみどりは、3分の1くらいを摘む
- ちょうど手で摘み取れるくらいの柔らかさのときが適期
そして、もう1つ大事な一文がありました。木の勢いが衰えている場合は、その年に限ってみどりを摘むのを控える、というものです※1。みどり摘みは成長を抑えるための作業なので、弱っている木にやると、さらに弱らせてしまうからです。
つまり、みどり摘みは木を見て判断する作業です。カレンダーどおりに毎年同じことをやればいい、という話ではありません。屋根より高い松なら、なおさら、上のほうの芽の様子は下からでは分かりません。
松の剪定の時期に行う「もみあげ」とは?秋〜冬に何をする?
もみあげは、秋に、去年の古い葉と今年の葉の一部を手で軽くむしり取る作業です。 余分な葉がなくなることで、下の枝まで日が当たり、風通しもよくなります。あわせて、枯れ枝や混みすぎた枝をハサミで元から切ります。美しい樹形を保つことと、病害虫を防ぐことの2つが目的です。
長野県の資料では、もみあげ(葉むしり)について、美しい樹形を保ち、病害虫を防ぐには下枝までしっかり日が当たることが必要だ、と説明されています※1。
くらしのマーケットの解説では、秋の作業がもう少し具体的に書かれていました※2。
- 高いところから、枝がY字の二股に残るように切っていく
- 残った枝の葉を20〜30枚ほど残して、手で摘み取る
- いろいろな方向から松を見て、飛び出した枝や重なった枝を切って整える
うちの松は屋根より高いので、てっぺんから作業するには、それだけの高さの足場が要ります。同じ解説にも、松のてっぺんまで届く安全な足場を必ず用意するように、と書かれていました※2。
もみあげは、1枝ずつ葉を数えるように手でむしる作業です。枝の数が多い大きな松ほど、時間がかかります。【推測】親が「結構費用が掛かっているらしい」と言っていた理由の1つは、ここにありそうです。
松の剪定の時期を外すとどうなる?やってはいけない時期はある?

あります。松は夏までに翌年の新芽をつくるので、お盆を過ぎてから芽を摘むと、翌春に新芽が出なくなります。 また、形を整えようとして秋に枝葉を刈り込むと、その年に出た新しい葉の多くが失われ、木の勢いが衰えるきっかけになります。勢いが落ちた松は病害虫にやられやすく、弱りはさらに進む。この2つが、時期外れの剪定で起きることです。
長野県林業総合センターには、剪定が原因で弱ってしまった木の相談が持ち込まれることがあり、特に松で多い、と書かれていました※1。その注意点を、私なりに並べた表がこちら。
| やりがちなこと | 何が起きるか |
|---|---|
| お盆を過ぎてから芽を摘む | 翌年の新芽が出なくなる |
| 秋に、ほかの庭木と同じようにハサミで刈り込む | 今年の新しい葉が減り、木が弱るきっかけになる |
| 弱っている年にもみどり摘みをする | 成長をさらに抑えてしまう |
表にすると分かるのは、松は、切る時期を間違えると翌年に響く木だということです。
親が毎年、植木屋さんに頼んでいるのは、【推測】こうした松の性質を分かっている人に任せたい、という理由もあるのだと考えられます。
松の剪定の時期と一緒に気をつけたい「松くい虫」とは?
松くい虫被害は、体長1ミリにも満たない「マツノザイセンチュウ」が松の中に入って起きる病気で、運び屋はマツノマダラカミキリです。 林野庁によると、全国の被害量は2025年度に前年度の163%、約63万㎥に増えました。庭の松の予防には、初夏の薬剤散布や、冬の樹幹注入(幹に薬を入れる方法)があります。
林野庁のページでは、松くい虫被害は「依然として我が国最大の森林病虫害」と書かれています※4。全国の被害量は長い間減っていましたが、2023年度に12年ぶりに増え、2025年度は前年度比163%の約63万㎥でした※4。
仕組みも書かれていました。マツノザイセンチュウという、体長1ミリメートルにも満たない線虫が松の中に入ることで起きる被害で、その線虫を松から松へ運ぶのが、マツノマダラカミキリというカミキリ虫です※4。
庭の松でできる予防として、くらしのマーケットの解説では次の2つが紹介されていました※5。
| 予防の方法 | 時期の目安 | どんな方法か |
|---|---|---|
| 薬剤の散布 | 5月末〜6月初旬ごろ | カミキリが成虫になるころに、元気な松に殺虫剤をまいておく |
| 樹幹注入 | 12月〜3月 | 松の幹に穴をあけて薬を入れ、6月までに木全体へ行きわたらせる |
同じ解説では、線虫に入られた松は、早ければ1〜2か月で枯れてしまうとも書かれていました※5。
剪定の時期と予防の時期は、重なる部分があります。5月のみどり摘み、5月末〜6月の散布、冬の樹幹注入。【推測】植木屋さんに年1回頼むときに、予防もあわせてお願いしているかどうかで、費用はかなり変わりそうです。実家の松に予防をしているのかどうかも、私はまだ知りません。
松の剪定は自分でできる?高い松で気をつけたいことは?
低い松なら、時間をかければ自分で手入れすることもできます。ただ、屋根より高い松は話が別です。 脚立やはしごからの転落事故は60〜70歳代に多く、国民生活センターは2026年10月にも、庭木の手入れ中の事故が目立つと注意を呼びかけています。高い松は、親にも自分にも無理をさせず、専門の人に任せるのが安全です。
国民生活センターの2019年の発表によると、脚立やはしごを使った作業中に転落した事故の情報が、医療機関から433件寄せられていました※6。そのうち半数以上の236件が60〜70歳代です。死亡事故が3件あり、入院が必要だった事故は約半数の206件にのぼります※6。
さらに、2026年10月8日に出た「見守り新鮮情報」第553号では、庭木の剪定中に脚立から落ちて入院した70歳代の事例などが紹介されていました※7。そこには、特に庭木の手入れ中の事故が目立ち、重い事故につながる例も見られる、と書かれています※7。
この数字から見ると、高い松の手入れを植木屋さんに任せることには、安全の面でも意味があります。実家までは電車で2時間。離れて暮らす子が、帰省のついでに慣れない高い木に登る。そうした無理をしないためにも、頼み先を知っておく意味があります。
自分でやるなら、どこまで?
自分でやるかどうかの線を、目安として引くとこうなります。
- 地面に立って手が届く高さの枝:みどり摘みの練習くらいはできる
- 脚立が必要な高さ:1人ではやらない
- 屋根より高い部分:専門の植木屋さんに任せる
くらしのマーケットの解説にも、松の剪定は他の庭木より作業が多く手間がかかるので、時間がない人や失敗したくない人はプロに頼むことをすすめる、とありました※2。
松の剪定を植木屋に頼むといくら?料金はどう決まる?
庭木の剪定料金は、職人1人1日あたりの「日当制」と、木1本あたりの「単価制」の2つが基本です。 日当制の相場は1人1日1.8万〜2.5万円ほどです。ただ、松は手間がかかるため、ホームセンター3社の料金をまとめた記事でも「マツや7m以上の木は別途見積もり」と書かれていました。高い松ほど、現地で見てもらう前提になります。
くらしのマーケットの記事(2024年9月時点の情報)では、料金の考え方が次のようにまとめられていました※8。
| 料金の決め方 | 目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 日当制(職人1人1日) | 1.8万〜2.5万円 | 地方ほど安く、都会ほど高い傾向 |
| 単価制・高木(高さ5〜7m未満) | ホームセンターで1本2万円の例 | マツや7m以上の木は別途見積もり |
| ゴミの処分費・出張費など | 別料金のことが多い | 見積もりの明細で確かめる |
日当制で考えてみます。職人さん2人で1日かかったとすると、1.8万〜2.5万円 × 2人 = 3.6万〜5万円です。2日かかれば、その倍になります。これは私が計算した目安で、実際の金額ではありません。
シルバー人材センターに頼むという方法もあります。千葉市のシルバー人材センターでは、植木の剪定は1人9,000円(4時間)からで、以後1時間ごとに加算されます※9。4時間で9,000円なら、1時間あたり2,250円です。ただし、千葉市の場合は高さ3.5mの植木までの対応とされていました※9。
【推測】屋根より高い松は、この3.5mには収まらない大きさです。親が年1回頼んでいる植木屋さんは、その大きさの松を引き受けてくれている頼み先ということになります。
親が頼んでいる松の剪定、子どもが把握しておきたいことは?
親が植木屋さんに頼んでいるなら、まず「どこに・いつ・何を・いくらで」頼んでいるかを聞いておくと安心です。 頼み先の連絡先、来てもらう時期、剪定だけか予防や片付けも含むか、1回の費用と支払い方。この4つが分かれば、親が頼めなくなったときにも、同じ植木屋さんに続けてお願いできます。
ここまで調べてきて、ようやく「把握しないといけない」の中身が見えてきました。把握しておきたいことを、表にまとめます。
| 聞くこと | なぜ知っておきたいか |
|---|---|
| どこの植木屋さんか(名前・連絡先) | 親が頼めなくなったとき、同じところに続けて頼めるように |
| 毎年いつ来てもらっているか | みどり摘みの時期か、もみあげの時期かが分かる |
| 何をしてもらっているか | 剪定だけか、松くい虫の予防や枝の片付けも含むか |
| 1回いくらで、どう払っているか | 実家を守るお金として、きょうだいで共有できる |
| 何人で、何日くらいかかるか | 日当制か単価制か、料金の決まり方が分かる |
この表の上の3つは、親の手帳やカレンダー、植木屋さんの領収書を見せてもらえば、分かる見込みがあります。
実家のことを書き出した生前整理のやることリストでは、「自分でやること、人に任せることの線を引く」を8つ目に挙げました。庭の赤松は、まさに「人に任せる」側の代表です。任せる相手を知っておくことが、最初の一歩になります。
お墓の手入れについても、同じことが言えます。お墓のことは墓じまいの費用を調べた記事にまとめています。
松の剪定の時期のまとめ


松の剪定の時期は、5月ごろのみどり摘みと、秋〜冬のもみあげの年2回が基本です。 お盆を過ぎてから芽を摘む、秋に刈り込む、といった時期外れの作業は、翌年の木の勢いに響きます。屋根より高い松は自分で登らず、専門の植木屋さんに任せる。そして親が頼んでいるなら、頼み先と費用を聞いておく。これが今回のまとめです。
調べたことを、最後にもう一度並べておきます。
- 松の剪定の時期は年2回。5月ごろのみどり摘みと、秋〜冬のもみあげ
- みどり摘みは、真ん中の強い芽を摘み、残りを3分の1ほど摘む。弱っている年は控える
- もみあげは、古い葉と増えすぎた葉を手でむしり、日当たりと風通しをよくする
- お盆過ぎの芽摘みと、秋の刈り込みは、木を弱らせるきっかけになる
- 松くい虫の予防は、5月末〜6月の散布か、12月〜3月の樹幹注入
- 脚立やはしごの転落事故は60〜70歳代に多い。高い松は専門の人に任せる
- 料金は日当制か単価制。松や高い木は、現地で見積もりになることが多い
- 親が頼んでいるなら、頼み先・時期・作業内容・費用を聞いておく
盆と正月に帰っている実家の、屋根より高い赤松。その手入れを、いつ、誰が、いくらでしているのかを、私は知りませんでした。
「把握しないといけない」と思ったことの中身は、上の表の5つです。調べてみて、ようやくそこまで分かりました。
※この記事は、筆者が実家の松について調べた記録です。木の状態によって適した時期や作業は変わります。実際の手入れは、植木屋さんなど専門の方に相談してください。
出典
- ※1 マツの剪定(ミニ技術情報 No.11)(長野県林業総合センター)
- ※2 松の剪定って自分でできるの?(くらしのマーケットマガジン)
- ※3 アカマツ(管内の樹木図鑑)(林野庁 東北森林管理局)
- ※4 松くい虫被害(林野庁)
- ※5 松くい虫の対策時期は?予防時期が限られるのは何故かを解説(くらしのマーケットマガジン)
- ※6 脚立・はしごからの転落事故に注意(国民生活センター)
- ※7 重篤な事故になることも!脚立やはしごからの転落に注意(見守り新鮮情報 第553号)(国民生活センター)
- ※8 庭木の剪定料金は?費用を抑える3つのコツも(くらしのマーケットマガジン)
- ※9 シルバー人材センターへのご入会とご利用(千葉市)
